オーバーラッピングとシャドーイングの違い|どちらを先にやるか
三橋竜彰・
オーバーラッピングとシャドーイングは、どちらも「音声に合わせて英語を声に出す」練習です。名前だけ見ると区別がつきにくいのですが、違いは1つに絞れます。
**スクリプト(字幕・テキスト)を見るか、見ないか。**これだけです。この記事では2つの違いと、どちらを先にやるかの考え方を整理します。練習の手順そのものは扱いません——動画を素材にした具体的な進め方はシャドーイングのやり方(動画を教材にする5ステップ)にまとめてあり、オーバーラッピングはその途中のステップとして出てきます。
違いは「見るか、見ないか」と「同時か、追うか」
| オーバーラッピング | シャドーイング | |
|---|---|---|
| スクリプト | 見る | 見ない |
| 発声のタイミング | 音声と同時に重ねる | 音声を追いかける(1〜2語遅れ) |
| 頼りにするもの | 文字と音の両方 | 音だけ |
英語で書くと、オーバーラッピングは overlapping(重なる)、シャドーイングは shadowing(影のように追う)です。名前がそのまま動作を表しています。
ポイント
「重ねる」のがオーバーラッピング、「影のように追う」のがシャドーイング。文字を見ていいのが前者、音だけが頼りなのが後者。この2軸で区別できます。
負荷の差はどこから来るのか
同じ素材でも、シャドーイングのほうが難しく感じます。理由は、やることの数が違うからです。
オーバーラッピングでは、次に何の音が来るかが文字で見えています。声に出すことに集中できます。
シャドーイングでは、聞き取る・意味を保持する・声に出すを同時にやります。文字という手がかりが無いぶん、聞き取れなかった箇所はそのまま抜け落ちます。
だから、聞き取れない素材でシャドーイングをしても、聞き取れないまま口だけが動きます。先に文字で確認しておく工程が要るのはこのためです。
どちらを先にやるか
一般には、オーバーラッピングを先に置きます。文字で音と意味を確認してから、文字を外す、という順番です。
ただしこれは固定の正解ではなく、素材との相性で決まります。判断の目安を書いておきます。
- 初見でだいたい聞き取れる素材 → いきなりシャドーイングでかまわない
- 半分くらいしか聞き取れない素材 → オーバーラッピングを挟む
- ほとんど聞き取れない素材 → そもそも素材が難しすぎる。手前で意味を理解する工程が要る
3つ目が見落とされがちです。練習の順番を工夫しても、意味が分からない素材は意味が分からないままです。素材の選び方はシャドーイングの教材の選び方で扱っています。
動画を素材にするときの見分け方
YouTube を素材にする場合、この2つの切り替えは字幕のオン・オフとほぼ一致します。
- 字幕を表示したまま声に出す → オーバーラッピングに近い状態
- 字幕を消して声に出す → シャドーイングに近い状態
同じ動画で字幕を切り替えるだけで、2つの練習を行き来できます。**素材を替える必要はありません。**字幕の設定と学習での使い分けはYouTubeの英語字幕の使い方にまとめました。
ポイント
教材を2種類そろえる必要はありません。1本の動画で、字幕あり→字幕なしと進めれば、そのままオーバーラッピング→シャドーイングになります。
用語が混ざりやすい理由
この2つが混同されるのは、シャドーイングの手順の中にオーバーラッピングが含まれることがあるからです。「シャドーイングのやり方」として紹介される手順の途中に、字幕を見ながら重ねる工程が入っていることは珍しくありません。
つまり両者は対立する2択ではなく、片方がもう片方の準備段階として使われる関係にあります。「どちらが正しいか」で迷う必要はありません。
なお、シャドーイングで何が身について何が身につかないのかはシャドーイングの効果とは?身につくもの・つかないもので整理しています。
よくある質問
オーバーラッピングとシャドーイングの違いは何ですか?
スクリプト(字幕・テキスト)を見るかどうかと、発声のタイミングです。オーバーラッピングは文字を見ながら音声と同時に重ねて声に出します。シャドーイングは文字を見ず、音声を1〜2語遅れて追いかけます。名前のとおり、重なるのが overlapping、影のように追うのが shadowing です。
どちらを先にやるべきですか?
一般にはオーバーラッピングを先に置きます。文字で音と意味を確認してから文字を外す、という順番です。ただし固定の正解ではなく素材との相性で決まります。初見でだいたい聞き取れる素材ならいきなりシャドーイングでかまいませんし、半分くらいしか聞き取れないならオーバーラッピングを挟みます。
シャドーイングのほうが難しいのはなぜですか?
同時にやることの数が違うためです。オーバーラッピングは次に来る音が文字で見えているので、声に出すことに集中できます。シャドーイングは聞き取る・意味を保持する・声に出すを同時に行い、文字の手がかりがないぶん、聞き取れなかった箇所はそのまま抜け落ちます。
教材は2種類そろえる必要がありますか?
必要ありません。YouTubeを素材にする場合、この2つの切り替えは字幕のオン・オフとほぼ一致します。同じ動画で字幕を表示したまま声に出せばオーバーラッピングに近い状態、字幕を消せばシャドーイングに近い状態になります。1本の動画で行き来できます。
ほとんど聞き取れない素材でも練習になりますか?
練習の順番を工夫しても、意味が分からない素材は意味が分からないままです。ほとんど聞き取れないなら素材が難しすぎるので、手前で意味を理解する工程を入れるか、素材そのものを見直してください。
まとめ
- 違いはスクリプトを見るか見ないか、そして同時に重ねるか追いかけるか
- シャドーイングのほうが難しいのは、文字という手がかりが無く、同時にやることが多いから
- 順番は一般にオーバーラッピングが先。ただし素材が聞き取れる度合いで決めてよい
- 動画なら字幕のオン・オフで2つを行き来できる。素材を替える必要はない
- 両者は対立する2択ではなく、片方がもう片方の準備段階になる関係
どちらを選ぶかより、その素材の意味が分かっているかのほうが先に効きます。