イマージョン・プログラムとは|学校の仕組みと独学との関係
三橋竜彰・
「イマージョン・プログラムって、結局どういう意味なのだろう」
「イマージョンラーニングの『イマージョン』と、同じものなのか」
「学校の話と独学の話が混ざっていて、どちらを読めばいいか分からない」
「イマージョン」を調べて、学校の教育の話に行き当たった方に向けた記事です。
先に答えを書きます。イマージョン・プログラム(イマージョン教育)は、外国語を「学ぶ教科」としてではなく、教科を学ぶための手段として使う、学校の教育の仕組みです。独学の「イマージョンラーニング」は、同じ「イマージョン」という語を使っていても、別の話です。
この記事では、次の3つを整理します。
- イマージョン・プログラムの意味と、始まり・タイプ・日本での位置づけ
- 「イマージョン」という語の意味
- 独学のイマージョンラーニングとの関係
運営者は、YouTube動画で表示された英文を保存するChrome拡張機能「ImmerNote」を開発していて、自身も英語を学びながら使っています。学校の教育の専門家ではないので、この記事は、公的機関や学術の資料に書かれていることだけを、出典つきで整理します。
独学のほうの話は、イマージョンラーニングとは?日本で独学する実践ガイドにまとめてあります。この記事が扱うのは、学校のイマージョン・プログラムと、その言葉の意味だけです。
イマージョン・プログラムは、外国語で教科を学ぶ教育の仕組みです
イマージョン・プログラムでは、外国語は「学ぶ教科」ではありません。神奈川県立総合教育センターの資料は、外国語は学習する教科ではなく、教育内容を学ぶための媒体である、と説明しています。
同じ資料は、このプログラムの際立った特色を、大半(50%〜100%)の授業を外国語で教えること、としています。
英語の授業を増やすのとは、外国語の位置づけが違います。算数や理科などの教科そのものを、外国語で学ぶのが、この教育の中身です。
イマージョン・プログラムでは、外国語は科目ではなく、授業を行うための言葉です。「イマージョン」という語には、2つの意味が辞書に載っています
「イマージョン(immersion)」は、もとは「浸す」という意味の語です。この語義は、独学のほうの記事で、辞書の出典つきで書いています。
英語の辞書には、言語学習に関する意味も、別に載っています。Cambridge Dictionaryの immersion の項には、言語や技能を、その言語や技能だけを使って学ぶ過程(the process of learning a language or skill by using nothing else but that language or skill)という語義があります。
この辞書の語義は、学校の教育と独学を、区別して書いていません。同じ語が、学校の制度の名前としても、学び方の呼び名としても使われています。そのため、検索すると、2つの話が混ざって出てきます。
始まりは、1965年のカナダ・ケベック州です
イマージョン教育の始まりは、カナダのフランス語イマージョンだとされています。マニトバ州教育省の資料には、フランス語イマージョンは、1965年に、ケベック州のセント・ランバートで、実験として始まった、と書かれています。
カナダ政府の公用語コミッショナーのサイトには、セント・ランバートの幼稚園のクラスで導入されたあと、フランス語イマージョンはカナダ全土に広がった、とあります。
この記事で確かめられた場所は、「ケベック州のセント・ランバート」までです。学校の名前や、始めた人たちの人数は、資料によって書き方が違うので、書きません。
開始の時期と外国語の割合で、タイプが分かれます
イマージョン・プログラムには、いくつかのタイプがあります。見分ける軸は、おもに2つです。
| 軸 | 資料に書かれていること |
|---|---|
| 始める時期 | 早期は、幼稚園か1年生から。後期は、7年生から(マニトバ州教育省の資料) |
| 外国語の割合 | 大半(50%〜100%)の授業を外国語で行う。「早期部分的イマージョン」は、50%の教科を第二言語で行い、残り50%は第一言語で行う(神奈川県立総合教育センターの資料) |
ただし、「早期」「後期」の学年の境目は、資料によって違います。上の表は、マニトバ州教育省の資料のものです。日本の学校の話に、そのまま当てはめることはできません。
「完全」と「全面」のように、同じ区分を指す言葉の書き方も、資料によって揺れています。
日本では、教育課程特例校の取組例に「イマージョン教育」があります
日本での位置づけは、文部科学省の教育課程特例校の制度概要で確かめられます。令和5年4月現在の取組例として、「既存教科を英語で実施(イマージョン教育)」が挙がっています。
この資料から言えるのは、制度の中に「イマージョン教育」という取組の型があるところまでです。実施している学校の数や、効果については、この記事では書きません。
日本の小学校段階の英語イマージョン教育の研究は、限られているとする学術の論文もあります。効果を断定できる段階の話は、確かめた範囲では見つかっていません。
独学のイマージョンラーニングは、同じ語でも別の話です
ここまでの学校の話と、独学のイマージョンラーニングは、同じ「イマージョン」という語を使っていますが、話が別です。確かめた範囲では、公的・学術の資料のどれも、独学のイマージョンを「イマージョン教育」の一種とは書いていません。
学術の資料には、バイリンガル教育の文献で「immersion education」という語が、セント・ランバートに始まる特定の第二言語教育のモデルを指す、という説明があります(Johnson、2007)。「イマージョン教育」は、特定の教育モデルの名前として使われているということです。
違いを、運営者の整理として表にします。公的な資料から確かめた部分と、独学の側の説明を分けて読んでください。
| 学校のイマージョン教育 | 独学のイマージョンラーニング | |
|---|---|---|
| 外国語の位置づけ | 教科を学ぶための手段(資料で確認) | 触れる英語の量を増やす場(運営者の整理) |
| 授業での割合 | 大半(50%〜100%)を外国語で(資料で確認) | 決まりはなく、自分で決める(運営者の整理) |
| 進める人 | 学校や教育委員会 | 自分 |
独学の側で、効果の見え方を扱った記事は、イマージョンラーニングは効果ない?|出ていないのか、見えていないのかです。学校の話と、独学の話を混ぜて読むと、判断を誤りやすい、という整理があります。
ポイント
イマージョン・プログラムは、外国語で教科を学ぶ学校の教育の仕組みです。独学のイマージョンラーニングとは、同じ語を使っていても別の話です。どちらを調べているのかを、先に決めて読みます。
よくある質問
イマージョン・プログラムとは、どういう意味ですか?
外国語を学ぶ教科としてではなく、教科を学ぶための手段として使う、学校の教育の仕組みです。神奈川県立総合教育センターの資料は、外国語は学習する教科ではなく、教育内容を学ぶための媒体だと説明しています。大半(50%〜100%)の授業を外国語で行うことが、特色とされています。
イマージョン教育は、いつ、どこで始まりましたか?
マニトバ州教育省の資料によると、フランス語イマージョンは、1965年に、カナダのケベック州のセント・ランバートで、実験として始まりました。幼稚園のクラスで導入されたあと、カナダ全土に広がったと、カナダ政府の公用語コミッショナーのサイトに書かれています。
日本にもイマージョン教育はありますか?
文部科学省の教育課程特例校の制度概要に、令和5年4月現在の取組例として、既存教科を英語で実施する「イマージョン教育」が挙がっています。実施している学校の数や効果は、この記事では確かめていません。
独学のイマージョンラーニングは、イマージョン教育と同じですか?
同じとは言えません。公的・学術の資料で、独学のイマージョンを、イマージョン教育の一種と書いたものは、確かめた範囲では見つかりませんでした。同じ「イマージョン」という語を使っていても、学校の教育の仕組みと、独学の学び方は、別の話です。
まとめ
- イマージョン・プログラム(イマージョン教育)は、外国語を、教科を学ぶための手段として使う学校の教育の仕組み
- 特色は、大半(50%〜100%)の授業を外国語で行うこと。始まりは、1965年のカナダ・ケベック州
- タイプは、始める時期(早期・後期)と、外国語の割合で分かれる。学年の境目は資料によって違う
- 日本では、文部科学省の教育課程特例校の取組例に、「イマージョン教育」がある
- 独学のイマージョンラーニングとは、同じ語でも別の話。どちらを調べているのかを、先に決める
独学のほうの「イマージョン」を調べているなら、イマージョンラーニングとは?日本で独学する実践ガイドから読むと、全体がつかめます。観たあとに英文を手元へ残す側が要るなら、運営者が開発しているImmerNoteをChromeに追加して試せます。